日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.173

自立活動―授業の再検証

 「訓練行ってきます」「毎日教室でもこの訓練やってね…」時間の指導の前後で、こんな言葉が今だに校内で聞かれていませんか。
 私たちの中に(教師の中には)まだ「身体の訓練をやっていくこと」が「自立活動の指導」だという前提のようなものが残っていませんか。そして子供たちには「体の訓練を継続することが自立活動だよ」ということを無意識のうちに意識づけていませんか。
 「養護・訓練」から「自立活動」に改定されて数年経ちました。学校における「自立活動」のとらえ方や授業の在り方はどう変わったでしょうか。第一七三号では、そこを改めて取り上げました。
 改定のポイントの一つである学校教育全体で行う「自立活動の指導」をどう考えていけばよいか、また、自立活動を充実させていくための校内組織はどうあればよいか、ということも含めて、論説及び実践報告を構成しました。
 この子にとっての「自立活動」とは何なのか、考え直す材料としていただければ幸いです。
(尾﨑美恵子)

 

・特集
自立活動―授業の再検証

個別の指導計画が定着する中で、自立活動の意義は生かされているのでしょうか。自立活動の考え方や組織体制等を踏まえつつ、授業の検討を通して、自立活動の在り方を問い直します。
・巻頭言
子どもの主体性を育てる授業とは
梶田 叡一
兵庫教育大学学長
・論説
自立活動の現状と課題
下山 直人
文部科学省初等中等教育局
特別支援教育課特殊教育調査官

自立活動の実施状況とその課題
當島 茂登
独立行政法人国立特殊教育総合研究所
総括主任研究官

学校の教育活動全体を通して行う自立活動
川間 健之介
筑波大学大学院人間総合化学研究科助教授
・実践報告
学校内でコーディネート機能を果たす自立活動部の取組
―総合型の養護学校への転換を目指して―
篠原 浩美
広島県立広島養護学校教諭
「自立活動の時間の指導」と「自立活動の指導」を密接に関連づけた指導
―QOLの向上を目指して―
澤井 ひとみ
富山県立高志養護学校教諭
自立活動における課題設定と学習内容の選択
―姿勢を保持する力を高める指導―
廣瀬 雅次郎
長崎県立長崎養護学校 教諭
・連載講座:個別の教育支援計画(二)
どのように策定し活用するのか
竹内 朗
東京都立城南養護学校主幹
・講座Q&A
知的障害養護学校での自立活動
・人物紹介
下田 巧先生と養護教育
林  友三
元東京都立北養護学校校長
・運動支援の基礎知識3・4
3 臥位でどうしたらリラクセーション・くつろげますか?
4 運動支援その「基本の基」を学びあいましょう(運動障がいの援助指針)
染谷 淳司
東京小児療育病院
みどり愛育園 理学療法士
・ちょっといい話 私の工夫
見えにくさをもつ子供の学習環境の整備と教材の工夫
奥山  敬
東京都立大泉養護学校 教諭
・医療的ケアの最前線
新たな職種(看護師)を迎えて
北川 末幾子
大阪府立藤井寺養護学校 養護教諭
・特別支援教育の動向
神戸市の特別支援教育の展開と肢体不自由教育
和田 洋
神戸市教育委員会専務局指導部 特別支援教育課
・キーワード
自立活動とICF
徳永 豊・徳永 亜希雄
国立特殊教育総合研究所
・図書紹介
『特別支援教育におけるコミュニケーション支援―AACから情報教育まで―』
『特別支援教育におけるコミュニケーション支援」編集委員会
(マジカルトイボックス・チャレンジキッズ研究所)編著

『ICF(国際生活機能分類)活用の試み―障害のある子どもの支援を中心に―』
独立行政法人国立特殊教育総合研究所
世界保健機構(WHO)
・読者の声
特別支援教育推進コーディネーターの想い
岸本 彰
大阪府立藤井寺養護学校教諭

 今後の特殊教育の在り方が検討され、近い将来の法令改正を含めた「特別支援教育」へと、これまでの特殊教育(大阪府では障害教育)を大きく変えることが議論されています。
 大阪府内でも各小・中学校及び市町村では着々とその体制を整えつつあります。また、将来「コーディネーター」に任命されるであろう特殊学級の担当教員が特別支援教育やアセスメントに関する研修を受講し、スキルアップを図っています。
 一方、盲・聾・養護学校は「特別支援学校」となり、センター的役割を担うとされています。盲・聾・養護学校では一学級当たりの児童生徒数が少なく、特に、肢体不自由養護学校では教員一人当たりの生徒数は他校種に比して非常に少ない状況にあります。それにもかかわらず、一部の教員が地域支援に出ることを、嫌がる教員が多いです。周りの教員に気を使いながら地域支援に東奔西走するものの、職場内では快く思われていないのが現状です。
 養護学校教員でありながら特別支援教育に無関心で、これまでと変わらない日々を繰り返している教員は残念ながら多いと思います。特別支援教育の基本的な考え方の一つは、障害のある児童生徒のニーズを正確に把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うということです。 
 現在の養護学校が、特別支援学校として、真にその責務を果たすためには、養護学校教員自身のやる気と意識改革が不可欠です。


第二十二回摂食指導講習会に参加して
福田 洋樹
済生会熊本福祉センターなでしこ園児童指導員

 私は熊本県の知的障害児の通園施設で働いています。今回の摂食指導講習会は主に養護学校の教諭を対象としたものでしたが、施設の方でもかなり取り入れていける内容だったと思います。施設でも摂食指導は行っていますが、しっかりと系統立てられた指導ができておらず、一から摂食指導について学びたいと思い、参加しました。
 特に今回の講習会では実技が多く、実際にやってみて分かることがたくさんありました。一つ一つの介助に意味があり、どの段階でどういうことが問題なのかということを自分なりに整理することができ、実のある研修になりました。また、今まで自分が摂食指導についてどれだけ無知であったかを思い知らされた三日間でした。
 今回の講習会で学んだことを単に自分の中の知識としてとどめておくだけにせず、施設の就学前の子供たちにしっかりとした摂食指導を行うことで、早期に摂食・嚥下障害の改善ができるように努めていきたいと思います。
 また、講習会で出会った多くの人たちとの交流も自分にとって刺激になり、色々と勉強させていただきました。今回の講習会にかかわられた多くの方々に感謝したいと思います。
■トピックス 第三〇回記念日本肢体不自由教育研究大会案内他
■次号予告
■編集後記